周囲の評判があまりよくなかったので、鑑賞が遅くなってしまった
ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』。
結果、なんでもっと早く見なかったんだろうと大後悔しました。
素晴らしい作品でした。
以下ネタバレ含みます…
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死臭に包まれた部屋、ベッドに横たわるアンヌ…
残酷な映像から物語は始まります。
そして愛弟子のコンサート。
ステージ上の演奏者でなく、客席に座る老夫婦がこの作品の主人公・ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。
コンサートから帰宅後、自宅の鍵に窃盗を試みた痕があり
「警察を呼ぶわ」と戸惑い警戒するアンヌ、
「今夜のいい気分を損ないたくないから、明日にしよう」とジョルジュ。
根本的な性格は異なりながらも「今夜の君は綺麗だったよ」なんてさりげなく言うジョルジュ。
二人の結婚生活がいかに満たされたものであったか容易に理解出来る。
悲劇は突然訪れる。
翌日、朝食中にアンヌの様子に異変が。
95%成功と言われていた手術をするも、失敗してしまい、アンヌは半身麻痺に。
老老介護の日々が始まる。
いきなりジョルジュにアルバムを引っ張りださせ、
食事もおざなりに、過去を振り返り、アンヌは言う。
「人生は長く、美しい。」
「老いるとはこういうことなのだ」とまざまざと突きつけられたようなリアリティを帯びながら
日に日に衰弱して行くアンヌと、介護するジョルジュを淡々と映していく。
老いと病に対する恐怖心、介護することの不安…
自分の両親に、自分たちの将来に重ね合わせてしまい、途中から涙が止まらず。
そして二人の娘・エヴァ(イザベル・ユペール)の立場にも共感する点があり、、、
エヴァはイギリス人と結婚し、時々両親のもとを訪れる程度。
母の容態を心配し、訪問する度に悪くなる様子を見てジョルジュと衝突する。
「もっといい治療方法があるわ!本気で話し合わなきゃ!」
「話し合うとはどういうことだ?ママを引き取るとでも言うのか?」
言葉に詰まるエヴァ。
母を助けたい一方で、自分の人生を優先して考えてしまう…
切ない。
こんなにも将来に対して怖いと思ったことはないくらい。
「mal… mal… mal….」痛い、痛い、痛い…部屋中に響き渡るアンヌの声。
やめて!やっぱりか、ハネケ!
と思わずハネケを呪いたくなるような結末でしたが、
あれは二人にとってハッピーエンドなんだと思っておきます。
他者によって壊された鍵、娘に現実を見せたくないゆえに閉めてしまう鍵、アンヌに花を手向けて閉めた部屋の鍵、最後に二人で閉じた家の鍵。
鳩が入って来てすぐ追い出した窓、アンヌの旅立ちの後に再び入って来た鳩を抱きしめるジョルジュ、開けっ放しにしたアンヌの部屋の窓。
ハネケが言いたかったことのヒントが盛り込まれているんだろうけど
半分以上涙していたので、それを理解出来る程深く見れておりません…ああ。
なのでもう一回二回と見たいところなのですが、、、どうもつらくて。
もういっそのこと、ドラゴンボールと二本立てで組んで再見しようと思う次第です、はい。
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しかし邦題はどうかなー。
「愛、アムール」…「ポワロー、ネギ」と「チゲ、鍋」と同じことですよね?
「アムール」だけじゃダメだったのかしら。
まあいいとして。
銀座テアトルシネマではフィルム上映です!
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テアトルシネマ、クロージング上映はケン・ローチ「天使の分け前」。
この映画館が数ヶ月後になくなるのは、本当に、本当に、悲しい。いやだ。
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フランスから帰って、『男と女』のDVD鑑賞しながら、ドーヴィルに思いを馳せておりました。
アヌーク・エメの最近は知りませんが、トランティニャンのお姿がここで拝見できるのですよね。
長生きしてほしいわ・・・。
>みゅげ様
そうそう、トランティニャン様!
年老いて尚素敵です。
すごーく残酷な話ですけど、
是非見ていただきたい!
上京されるのであれば、銀座テアトルシネマで貴重なフィルムでご覧くださーい!