セラフィーヌの庭 Seraphine

8月公開のフランス映画『セラフィーヌの庭』(原題: Séraphine)の試写にお呼ばれしました。

監督:マルタン・プロヴォスト
出演:ヨランド・モロー
ウルリッヒ、トゥクール
アンヌ・ベネント
フランソワーズ・ルブラン
2008年/フランス・ベルギー・ドイツ/126分/35mm/カラー/フランス語・ドイツ語/原題:Séraphine

正直に申しますと、セラフィーヌ・ルイという人物どころか
作品すら知りませんでした。

ちょうど試写会で子供用の説明フライヤーが渡されたので、抜粋。


わたしの仕事は家政婦。
ウーデの家で働いていたので、画家として認められるようになったの。
私は不思議な花とか葉っぱしか描かないわ。
しかも強い色で神秘的にね。
毎日、夜一人で部屋にこもって制作したわ。
そのため病気になってしまったけどね。


アンリ・ルソーと同様の「素朴派」。
画家を職業とせずに、独学で絵を描く人。

ほー!なるほど、わかりやすい。

主演のヨランド・モローは『アメリ』『ミックマック』、『ベティの小さな秘密』『エッフェル塔(パリ、ジュテーム)』に出演している、有名どころ。
コメディ的な作風にはもってこいの体型の、おデブ勝ち組一派。

驚くべきはマルタン・プロヴォスト監督が、セラフィーヌについての知識がほぼ皆無だったということ。
友人のひとりから「あなたなら絶対に興味を持つわよ」と薦められ
ネットで検索し、それでもわずかな情報しか得られなかったのにも関わらず
好奇心を刺激されたとのだとか。

物語
1912年、フランス・パリ郊外のサンリス。
貧しく孤独な女性セラフィーヌの日々を支えていたのは、草木との対話や歌うこと、
そしてなによりも絵を描くことだった。
ある日、彼女はアンリ・ルソーを発見し、
ピカソをいち早く評価したドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデに見出され
その後、彼の援助のもと、個展を開くことを夢見るようになる。
そんな中、第一次世界大戦が起こり─。

始まって3分で好きな映画だと感じた。

以下、ネタバレ注意。



教会のロウソク、灯油、動物の血などで絵の具を作っていたというセラフィーヌ。
その独特な絵の具が、実に鮮やかで力強い色を生み出し、彼女が描く絵の神秘性を増長しています。
ウーデが「お金」で買ってあげようとする絵の具には一切見向きもしません。
ウーデは、セラフィーヌの唯一無二の才能を活かそうと、作品を世に広めようとしますが
やがて戦争が始まり、ドイツ人であるウーデはスイスに逃亡。
セラフィーヌの生活はどんどん苦しくなるばかり。
それでも彼女は絵を描き続けました。

戦争終了後、妹と、交際相手(ウーデは同性愛者だったのですね・・・)とともにフランス・シャンティイに住み始めたウーデ。
偶然に街の絵画展でセラフィーヌの絵に再会。
年月を経てさらにパワーアップした作品を目の当たりにしたウーデは、いてもたってもいられなくなりセラフィーヌを尋ねました。

セラフィーヌは家政婦を続けていますが、ウーデの援助により大金を手に入れます。

ウーデのブルジョワ車に乗り、木漏れ日を浴びながら喜ぶセラフィーヌの笑顔は、本当に幸せそうです。
お金が手に入ったから?
有名になるから?
自分の絵が認められたから?

いろんな喜びが詰まった笑顔かと思いますが、リアルに結婚相手もいないのに高級ウェディングドレスを購入するセラフィーヌを見て、神への思いが届いたと思ってるんだ、と推測。
神との挙式なんだろうな、と。

ただ、勢いで豪邸を購入したりと、セラフィーヌの行動は常軌を逸していました。
すぐに世界恐慌が襲い掛かり、ウーデから援助を断られます。

裏切り。
そんな思いが彼女の脳裏を過ぎったのでしょうか。

そこからの展開は見るに耐えないくらい切ないです。
ある行動を起こしたセラフィーヌは、警察につかまり、精神病院に収容され、絵を描くことを拒み続けます。
それでもウーデは彼女の作品を広めようと努めていました。
絵が売れたことを報告しに行っても、精神的に窮地に陥っている彼女には何も聞こえない。

内臓の奥底がずきずき痛くなるほど切ない結末かと思いきや、
ラスト3分の構図が美しすぎて鳥肌が立った。
彼女の純真無垢な心と、作品の力強さを巧く収縮した絵だと思う。

イントロの3分と、ラストの3分。
見事にやられました。

時代背景について、当時の芸術作品について、
予備知識をもう少し蓄えてから劇場に観に行こうと思います。

8月7日(土)より岩波ホール他にて全国順次公開。


以下、独り言。

プレスの“素朴派”の解説で
「日本で言う山下清」ってあった。

おおお、おにぎりが、たたた、食べたいんだな。

不思議と、バゲットよりもおにぎりが食べたくなったのでした。
それも塩むすび。

・・・こんな締めくくりで