引き裂かれた女 La fille coupée en deux

28日、東京日仏学院で新学期授業登録手続き開始。
震災で建物が損傷し、一部(旧校舎・螺旋階段のある3階建ての方)はまだ立ち入り禁止でしたが
早速たくさんの方が手続きしにいらっしゃってました。

登録手続きに並ぼうと思いましたが…
この日は『引き裂かれた女』の先行上映へ!!
故・クロード・シャブロル、遺作『刑事ベラミー』の一つ前の作品。
20世紀初頭・アメリカで起きた「スタンフォード・ホワイト事件」を題材にしたサスペンスムービー。

追われる愛より、追う愛を
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ポスターは日本版の方がかっこEね。

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ローカルテレビ局のお天気キャスター、ガブリエルは番組出演を機に知り合った初老の作家シャルルと恋に落ちる。
一方、多額の資産を持つポールからも強引に言い寄られるが、彼女は相手にしなかった。
シャルルと順調に愛をはぐくむ中、彼が突然姿を消してショックを受けたガブリエルは、ポールの求婚を受けてしまう――

『引き裂かれた女』4月9日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー
イメフォでは「クロード・シャブロル未公開傑作選」として5月21日からの3週間『甘い罠(ココアをありがとう)』『最後の賭け(賭けはここまで)』『悪の華』を上映!これまた楽しみ。

以下『引き裂かれた女』感想。ネタバレ含みます…

ガブリエル役は、物憂げアシンメトリー顔のリュディヴィーヌ・サニエ嬢。
博識で恋愛に熟知した初老男性にのめりこんでいく姿が、ものすごく不憫だけど、ものすごく愛くるしい。
彼女の純真さにこれだけキュンとなるのは、エロティシズムを露骨にしてないからかもしれない。
シャルルに連れて来られた秘密の社交場が、実は乱交場だったり。
孔雀のコスプレして四つん這いになって現れたり。
胸元が大きく開いた服ばかり着せるけど、見えそうで見えない胸。
露骨じゃないから余計エロい。そして哀憐の情を抱いてしまうの。

シャルル・サン・ドニ役はフランソワ・ベルレアン。
妻には何の不満もなく、聖人とまで言っておきながら、30も年の離れた娘を言葉巧みに操りやがって!
と憤慨したくなるのだろうけど、まあサニエ嬢だったら…と納得。

だいぶ世間からズレた、あんぽんたんなブルジョワのポールを演じるのはブノワ・マジメル。
「ちょっとだけでいいから好きになって」とか、爪をかむ癖とか、キスを拒まれただけで首絞めたりとかアホっぽさ満開。
シャブロルの、ブルジョワに対する辛辣な皮肉をびしびしと感じた。
でもみんな“ポール”という名前でなく“ゴダンス倅(せがれ)”としか呼ばないことは結局親の七光りで生きていることの切なさを感じれたり。そして実は悲しい過去があったりと、こんなダメな奴にすら同情してしまう。

脱帽。巧いな、シャブロル。

ポールの母親役のカロリーヌ・シホールの厳格な姑っぷり、不気味。
無駄にエロい編集者のマチルダ・メイにも釘付け。
マチルダ・メイと言えばこの作品ですが、

おっぱいとお月さま [DVD]

いやはや妖艶さが更に熟しててよかったー。うへへへ(親父目線)

マジシャンのアシスタントとして人生をリセット、そしてあらあら本当に引き裂かれちゃった荒唐無稽なラストには驚かされ
不気味な余韻が残った。
「希望」とか「再出発」とか、ポジな感情を抱かなくちゃいけなかったのかしら。
それにしてもこの不気味な感じ、暗い帰り道をずっと後からついてくるような気がしたのよね。

一回観ただけだとやっぱり謎のままの部分も多くって。
オチを知ったので、再見する必要があるなー、と。。。

そういや突如日本語が聞こえてくるシーンがある。
かーーーっ!映画館でおしゃべりかっ!
と思ったら、レストランのシーンの、なんてことない他の客の会話だった。
日本語だからあんなに鮮明に聞こえてきたんだろうけど…いや、意図的なのかは謎。

そして5月6月と続くシャブロル特集に向けて、この本を熟読するのです。

不完全さの醍醐味 クロード・シャブロルとの対話