私はオーディション番組があまり好きではないです。
審査員が辛口評価で厳しく叱る
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候補者が泣いてしまう
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こんなことで泣くようじゃプロになれないって叱る
ていうシナリオがどうも苦手で。
もしやらせじゃなかったにしても、人が叱られて泣くシーンを見るのはつらい。
だって今日日、時代遅れじゃないですかそんなん。
「周りのみんなに見せつけるように部下を叱る上司」
「部下は泣いてしまって意気消沈」
「その部下に助け舟出せずにただ黙って見ている私」
の構図のようで、苦手なんです。
だから「公共の電波を使って人を評価する」手の番組は避けていました。
でもNetflixで「フランス語字幕のTV番組」ってだけで見てみたら、
それはもうお腹抱えて笑ってしまった番組があるので、
ジャパネットたかた のトーンで声を高らかにしてオススメしたいです。
『パーフェクト・スイーツ: フランス編』C’est du gâteau!
おかし作りの初心者たちが、失敗にもめげず、傑作スイーツの再現にチャレンジする大爆笑の料理対決番組。目指せ、賞金5,000ユーロ!
https://www.netflix.com/jp/title/81061828
⬆️のリンクに日本語字幕付きの予告編ありますが、フランス語がわかる方は是非フランス語字幕版で見てください。
フランス語タイトルの「C’est du gâteau!」は
直訳すると「それはお菓子です」になるのですが
「朝飯前だ!」という意味があるフレーズ。
(こういうタイトルセンス、さすがだなあ)
「フランス編」と日本語タイトルにあるとおり、他の国のバージョンもあります。
素人たちによる「お菓子作るの下手くそ選手権」。
日本でも某番組で「運動神経ない芸人」とかありますが、それらと確かにコンセプトは一緒なんだけど…
この番組のいいところは、とにかく
参加者を讃える
ってところに尽きると思います。
某番組は運動神経のない芸人がスポーツするのを見て笑っているだけのような感じですが、運動神経ゼロだった小学校低学年の頃の私が見たら、何が面白いのかさっぱりわからなかったと思うんです。
自分もバカにされているような気がして。
「なんでそんなこともできないの?」
って言われるの、ほんと苦痛でしかないんですよ。
できないもんはできない、誰だって得手不得手があるわけで。
でもあの手の番組も、ちょっと作り方を変えれば、誰も苦痛に感じないようになるんじゃないかなーって、この『パーフェクト・スイーツ』を見て思いました。
(私はむしろ「お菓子作るのへたくそ芸人」なので、参加者側の目線で見ていました)
参加者が挑戦するのはお菓子づくり(お菓子というよりは「工作」の域ですが)。
やらせだとしてもここまで下手くそに作れないだろうってレベルのもののオンパレード。
スパチュラとかの道具を使わずに、粘土工作でもしているかのようにペタペタ手で触るわ、高いミキサーをものの見事にぶっ壊すわ、床にわんさかぶち撒けるわの大騒ぎ。
何が面白いかって、明らかに不味そうなのに、審査員たちも、他の参加者たちも、誰も「不味そう」とは言わないんです。
誰も卑下しないんです。誰もけなさないんです。誰もバカにして笑わないんです。
それどころか、みんな楽しそう。
ペタペタ手で触ってても司会者の
「手は洗ったのかい?」のツッコミに
「うん、昨日ね」なんて返せる参加者のノリがよい。
明らかに失敗…というかお手本とはまったく違うものを作っても
「これは愛を込めて作ったから♡」
って失敗を認めず、自分が自信を持っているところをプレゼンするのも、ポジティブが過ぎる。
審査員や司会者はとにかく「Bravo」を連発して褒める。
その工程を笑って見てはいるけど、
「クリエイティブだわ」とか「ウォーホルのようなポップアートだ」とか、とにかくポジティブな言葉を選んでいる。
食べても「クソまずい」とは決して言わずに、「生焼けだね」くらいの批評にとどめて、「でも味は美味しいよ」と、結果ポジティブにもっていく。
「この番組は不味いケーキを食べさせられる番組じゃなかったのかよ!なんだよ!すごく美味しいじゃないか!」
だから参加者も笑顔になる。
見ているほうももちろん笑顔。
みんながハッピー。
何気なく見始めたこの番組だけど、普段の仕事にも役立てるヒントがあると思います。
例えば、部下に対しての注意の仕方とか、デザイナーがこちらの意図と違う制作物をあげてきたときの対応とか…
世の中的にも、一昔前に比べればだいぶ言葉の選び方には気を遣うようになったけれども、
相手を讃える
っていうのは、仕事でも人間関係でも、一番根底にある大事なところだなあと、気付かされたのでした。
(たぶん制作側の意図とは違うんだろうけども)
人をリスペクトするのは、見ている側も本当に心地よい。いい番組だ!!
ああ、早く次のシーズンが見たい!!!
【注意」「食べ物を粗末にして!!」ってプンスカ怒る人には向いていません