レオス・カラックス、岡田利規による「対談」なる時間@ユーロスペース

日曜日のユーロスペースのこと。

カイエ・デュ・シネマ週間のプログラムとして
レオス・カラックス最新作『ホーリー・モーターズ』が特別先行上映。

上映後に、カラックス本人が登壇して岡田利規氏との「対談」が行われました。
司会は佐々木敦氏。

この「対談」には様々な意見がありました…

自分も「みんな同じ気持ちなのねー」などと軽率にツイートしてしまい、
それが変な形でRTされてしまって。
まあ私なぞのこづまらんツイートは大した物議を醸し出すわけでもなかったのですが
如何せん小心者な私はついついそのツイートを削除。。。

翌月曜日、佐々木さんはご自身のアカウントで、語弊があるかもしれませんが、「反論」をツイートされていました。

私は正直、岡田利規さんがどのような方なのか全然存じ上げませんでした。
岡田さんはチェルフィッチュ主催者なのですが
そもそもチェルフィッチュがどのような舞台を上演されているのかすら知りません。

カラックスの初期作品は、私のフランス好きに拍車をかけました。
大仰な表現かもしれませんが、彼は私の人生を変えた一人と言ってもいいかもしれません。

と、そういう熱の差があったのです。

岡田さんがどのような方なのか紹介される前に、カラックスが壇上に。
そもそもそのタイミングが悪かったのでしょうか。

私は「シネフィル」に属さないまでも、映画が好きで、フランス映画が好きで、カラックスが好きで。
ただただカラックスの声が一言でも多く聞けることをとても楽しみにしていただけです。
正直に言うと『ホーリー・モーターズ』、DVDでの鑑賞はあまり理解できなかったのですが
劇場で鑑賞してようやく好きになれたので、胸が熱いうちに
その「対談」とされていた時間に、もう少しカラックスの言葉を聞きたかったなあ、と単純に思ったのです。

佐々木さんはそのような声に対して「不寛容」とツイートされていましたが、それに疑問を覚え、悲しくなりました。
興味をそそられる「対談」であったのならともかく、一方通行な感じがしたのです。
佐々木さんと岡田さんが、カラックスの一ファンとして感想をただ伝えているだけのような印象だったのです。

「対談」と言われる時間は1時間程度でしたでしょうか。
途中まで必死でその内容をメモしたので、記憶が薄れないうちに、文字にしてみます。

カラックス
何を話していいのかよくわからないけど、、、。
『ホーリー・モーターズ』は様々な国で紹介してきた。
なので以前の作品以上に多くを語った。
もう言うことがないような気がするが、今日は何とか話してみようと思う。

佐々木さん
岡田さんは以前にもカラックスと面識があるということで。

岡田さん
『メルド!』の撮影時にカラックスが来日した際会ったことがある。
パリの郊外の劇場で、技術監督であり映画作家のパスカル・ランベールを紹介するイベントがあり
自分は演劇の側面を紹介するゲストとして参加した。
その中のコーナーで青山真治さんがゲストに来られた。
その打ち上げで、カラックスさんが青山さんにお会いしたいと電話をしてきた。
今からその打ち上げのお店にいらっしゃるということでビックリした。
そのときにもお会いした。
僕はカラックスさんのファンなので知人に自慢した。
知人にその自慢をするときに『ホーリー・モーターズ』を見たか、と聞かれることがあった。
自分はそのときまだ見ていなかったが、「すごく面白い」と聞いていたので楽しみにしていた。
今日やっと見ることができて興奮している。

佐々木さん
今日ご覧になってのご感想は。

岡田さん
演技と言うのは「演技をする本当の自分がいて、自分でない存在を演じる」と考えがちだが
果たしてどうなのかという投げかけを
こんなに自然主義的でない、説得力のある手法で作れることに感動した。
「演じる」ということが、俳優など演じることに携わっている人間だけでなく、
一般の人にも深く関わっている問題だと思わせる作品。

佐々木さん
岡田さんをゲストにお迎えしたのは、『ホーリー・モーターズ』が、これまでのカラックスさんの作品以上に
「映画についての映画である」から、「演じること」の映画だから。

カラックス
『ホーリー・モーターズ』は非常に短期間で構想し作った。
外国で他の映画を作りたかったのだが叶わず、それでもなんとか早く一本作らなければいけないと思って作り始めた。
短期間で作るために、ラッシュをしなかった。
『メルド!』のときはラッシュをしていたのだが、短期間で作らなければならないときはラッシュをすると「もうやめよう」と思うことがあるから。
主人公はSFの世界にいる者として構想した。
ただの俳優でなく、SFの世界に生きる人物として。
この一人の人物の一日を描いた。
映画の中で「今生きていることは何なのか」という問いかけをしたかった。
主人公は肉屋であってもいいのだが、そうすると「なぜ彼がこのことをしているのか」とフラッシュバックが必要だ。
今回の仕組みによって、様々な年齢、様々な人間を一日の中に表すことができた。

佐々木さん
主役のドニ・ラヴァンとはどのように話を進めたのか。

カラックス
もう何年も長編を撮影してなかったので、何か撮らないと気が狂うと思った。
なのでいくつか条件があった。
「パリでの撮影」「低予算」「ビデオで撮る」「ラッシュをしない」。
ドニ・ラヴァンを撮ることは最初から決めていた。
彼のことはよく知っているから。
だけど彼の私生活はまったく知らない。
一緒に食事をしたことは一回もない。友人ではない。
彼は自分の家から200メートルのところに住んでいるのだが、普段は会うこともない。
同じ年齢で身長も同じくらい。
出会った頃はお互い20歳前後だったと思う。
それ以来彼と話したことは一度もない。
最初の作品を撮ったとき、彼とは話していない。
出来上がった作品を見たとき、彼のことをよく見ていなかったのではないのかと思った。
二作目では彼を動かし、躍らせた。
『ホーリー・モーターズ』でもほとんど彼と話をしていない。
彼の衣装もメイクもかなりの仕事だった。
それぞれの人物がどのように動くかだけを考えた。
それ以上のことは話していない。

佐々木さん
去年ドニ・ラヴァンの舞台を見た。
実際に舞台上で動き回っている彼を見ると本当の素顔はどんなのだろうと思った。
『ホーリー・モーターズ』は冒頭だけ監督自身が演じているが、その意図は。

カラックス
今自分が見ている映像。
観客を正面から見ている場面。
闇の中に観客がいて、正面から見ているが、観客は眠っているのか死んでいるのかわからない。
眠っていた人が目覚め、観客を見るという場面を思いついたから。
シナリオに仮の役名として「レオス・カラックス」と書いた。
シナリオを書く途中で、ミシェル・ピコリが演じる役を自分がやってもいいと考えたが
そうするとあの役が誰なのかわからなくなると思った。
あの役はマフィアなのか内務省の人間なのかわからない。
なので最初の登場人物を、自分の愛犬と一緒に演じた。

ドニ・ラヴァンが20歳から50歳になるまで彼のことを撮影してきた。
彼は20歳の頃よりも偉大な俳優になっている。
特殊な素晴らしい体を作り上げ、その体を撮影したいと思う。
だから作品の冒頭にマレーの連続写真を入れた。
『ホーリー・モーターズ』は人間の身体と関係がある。
風景や、タバコ・ピストルなど人間が作り出したものもいいが、
映画作家は人間の身体や顔をみることが好きだ。
なので映画の祖先とも言える19世紀の連続写真を使った。
これこそが『ホーリー・モーターズ』、映画の「神聖な原動力」だ。

佐々木さん
カラックスとドニ・ラヴァンの関係は、岡田さんとチェルフィッチュの関係と似てると思いますが。

岡田さん
私生活で俳優と話すことはないので似ている。
(中略・・・)
個人的にモーションキャプチャーのシーンが面白かった。
モーションキャプチャーの現場に立ち会ったことがあるから。
その現場では動いてはいけない様子だったが、この作品では動き回ってるのでいいなあと思った。

カラックス
映画では動き回ることができる。
テイクの間に落ちたマーカーを拾うことができるから。
演劇の最中にマーカーが落ちるのが怖いから、自分は劇場に行かないのだろう。

岡田さん
演劇でも「演じること」を問題にする。
11人の役を、11人の人間になっているように感じることができるのは、映画ならではのこと。
演劇だと難しい。
映画というよりもっと開けた世界で「演じる」ということを扱っているように思った。

メモはここで終了していました。。。(涙)

疲れもあるでしょうけど、最後のカラックスの言葉をさっぱりメモしてなくて、記憶も曖昧で。
隣に座っていた方は、カラックスが話し出すと目を開けるのですが、幾度となく夢の中へ。
同時通訳ではないので、一時間のうち20分は通訳が介していたでしょうか。
確か「前作を撮ったときと同じ状態でなければ、次作は撮れない」的な…
撮禁だったので何も記録がなくて。
私のバカバカー!と自責するのであります。
だけど、ああ!そうそう、カラックス、「タバコを吸わせてくれ」と会場を後にしたんだった。
渋すぎる…

ただ、どうでしょうね、こうして文字にしてみるとカラックスは結構話してくれているし。
でも「対談」として成り立っていたかというと、やっぱり違う気がします。
会場のQ&Aがなかったのも、一方通行と感じた要因かもしれません。

カラックス、週末は韓国へ行くらしいですね。
オンライン翻訳で調べたところ、韓国語で「映画」は「영화 」、「カラックス」は「모기 락스 」と出てきました。
「Holy Motors」は「신성 모터스」・・・あってるのかな。タイトルは英語でいけるかな。
というわけでこの3ワードで週末検索してみます

>JUNさん
本当にありがとうございました!!!!!
卒なくサインもらう御姿、かっこよかったっす!

>Kさん
不思議さんにもごみさんにも会ったよ!
そして写真にも…(苦笑)