『少年と自転車』 Le gamin au vélo

ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟の最新作『少年と自転車』(Le gamin au vélo)を見てきました。

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児童相談所に預けられたまま12歳になろうとしていた少年シリル(トマス・ドレ)は、いつか父親を見つけて一緒に暮らしたいと願っていた。
ある日、彼は美容院を営むサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)と出会い、ごく自然に彼女と共に週末を過ごすようになる。
二人は自転車に乗って街を走り回り、ようやくシリルの父親(ジェレミー・レニエ)を捜し出すが――

音楽を用いたり、セシルちゃんのような有名どころのキャスティングなど、今までのダルデンヌ作品にはない試みがたくさん。
そしてなんとこの作品、『息子のまなざし』で来日時に“少年犯罪”をテーマにしたパネルディスカッションでの実話からインスピレーションを得て作られたのだとか。

以下感想。ネタバレ含みます。。。

親子関係と言う絶対的なテーマ。
『ある子供』につづき、またしても我が子を捨てると言うダメ父役のジェレミー君…
だけど(窮地に追い込まれて売ってしまったものの)立派な自転車を買ってあげたことからも
息子を可愛がっていた側面があるのだと伺えるし
シリルを「自分の子供として全く受け止められない」ようではないようで、
「シリルを捨てた」という選択肢を一概に非難することはできないのです。
シリルと決別する理由を「重荷だから」としか表現出来ないのですが
子供に対する愛情がないわけでなく、不器用で言葉下手としか思えなかった。

ただ、絶対的信頼を置いてきた父にそのように突き放されたシリルは
裏切られた深い絶望に襲われ、自分の存在を完全否定されてしまったと感じたのか、
更に心が荒んでいきます。

客観的に見れば、シリルの言動はありえないこと。
こんなに手を焼くような子供だったらいらない、なんて単純に思うシーンもあるのですが
救いの手を差し伸べ、離れられないサマンサの気持ちも分からないでもないのです。

例えば、水を流しっぱなしにして、ただその流水を見て触れるシリル。
単にサマンサに構ってほしいアピールだけでなく
孤独と悲しみ、心の中に蔓延る闇の部分が手に取るようにわかるのね。

シリルに初めて抱きつかれたときに芽生えたのかもしれない母性愛が
徐々に“里親”以上の愛になり、かけがえのない存在だと思うようになる。
お互いに一緒にいたいという理由は漠然としているけれど
この言葉にできないような感覚こそが、一番グッと胸に突き刺さるものなんだなあ。

“他人の子供”のせいで彼氏と別れた
“他人の子供”が事件を起こし、その和解金を20ヶ月分割払
…なんてシチュエーション、普通の感覚じゃ受け入れられないもの。
(まあ「俺とこの子とどっちを選ぶんだ!?」なんて選択をさせる男など、バッサリ切って正解です)

「またダルデンヌ、ここで終わらせてしまうの!?」というシーンからのラスト。
決してハッピーエンドとは言えないけれども、
シリルが、感謝や謝罪の言葉を素直に言える大人になっていく結末を予測してしまいました。

その他いろいろ気になる点を箇条書きで

・オリヴィエ・グルメおじさん、使い方贅沢ですね
・セシルちゃんの体型と、紫外線対策ゼロな肌と、ドン小西の辛口評価が怖いそのファッション
・『ロルナの祈り』の役作りで15キロも減量したジェレミー君、今度は立派な中年腹(まだ30歳なのに!)
・不良少年ウェス(エゴン・ディ・マティオ)と、映画に誘いに来た少年のギャップ
・自転車の鍵くらいかけようよ

イゴールの約束 [DVD]

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いい映画でした☆
Kさん、今日もメルシーです!