『100歳の少年と12通の手紙』 Oscar et la Dame Rose

映画『100歳の少年と12通の手紙』(Oscar et la Dame Rose)、観てきました。

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白血病を患い、余命宣告をされた10歳の少年オスカー。
病院内で彼と偶然出会った口の悪い宅配ピザ屋の女主人ローズは、少年のたっての希望により、病院長とピザの宅配を条件に12日間、毎日彼の元を訪れる約束をする。
腫れものに触るような周囲の大人たちの態度と対照的に、ごく普通にオスカーに接するローズ。
そして彼女は、残された時間の少ないオスカーに、1日を10年間と考え日々を過ごすこと、また毎日神様に充てて手紙を書くことを教える。
その日から少年は、限られた病院のなかで1日ごとに10年分の人生を体験していく…。

日本版公式サイト:http://100-12.com/


以下、ネタバレあり。。

どんないたずらをしても、叱ってくれないし、笑ってくれない。
大人たちの憐れみが、オスカーにとってはつらかった。
オスカーの死の宣告を聞いてしまった両親は、彼に会うこともできずただただ怯えてしまう。
自身の死が目の前にあることを知り、更にそんな両親の姿を見た直後に出会った、ド派手なピンク色のスーツを身にまとったローズ。
彼女の歯に衣着せぬ粗悪な言葉遣いが、オスカーには新鮮で嬉しかった。
オスカーは両親とも医師らとも話したがらず、相手役にローズを選んだ。

最初は躊躇うも、大人たちがオスカーとの距離を置く一方で、対等に接するローズ。
いたずらっ子のオスカーが死に怖気づく姿を、実に逞しく勇気付ける。
そして「1日に10歳年をとる」「神様へ手紙を書く」という最高の提案を出す。

恋人に「愛してる」という台詞を言わせたくない、なんて強がりで
病気が怖くて病院を毛嫌いしていたローズが
オスカーの前では良き母の顔、愛らしい表情を浮かべる。

オスカーが神様に出す手紙。言葉の選択が絶妙で、涙を誘う。
10代の思春期、20代の結婚…苦悩の時期も覚え、手紙の内容も一日ごとに着実に10歳年をとっている。
日に日に病状が悪化していく。体が思うように動かなくなっていく――

周囲からすすり泣きの音が。
私も号泣覚悟でハンカチを手に取って鑑賞していたのだけれど、涙が数粒頬を伝う程度でとどまった。

女子プロのシーンがなければもっと泣けたのかもしれない。
日本版予告しか見てなかったので、予想だにしないシーンだった。
フランス版予告にはちょっとそのシーンも↓

『地上5センチの恋心』でジョセフィン・ベイカーの歌に乗せてみんなでコミカルにダンスするシーンは、若干やりすぎ感もありつつ好きでした。
今回は単なる悲しい物語でなく、コメディ色を織り交ぜたかったのだろうけど…ちょっと遊びが過ぎたようで。
でも、このシーンがあったからこそ単なるお涙頂戴の悲劇ではなく、後半のファンタジー要素がより繊細で美しく見えたのかもしれません。

誰しも結末は「死」。オスカーの、その結末に辿り着くまでの道程は他の誰よりも充実したものであり、生きることの大切さを逆に大人たちに教えてくれました。
日常のなんてことない出来事でも人生の一大イベントへと変えていける想像力との素晴らしさ・可能性を大いに感じることができた一作。

心の奥底に響いてくるミシェル・ルグランの音楽。言わずもがな素晴らしかった。


原作のままでは、映画化は不可能だったのだとか。
これは是非活字で味わいたい世界。

100歳の少年と12通の手紙

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