トリュフォー『あこがれ』(Les Mistons)を学ぶ。

土曜朝、日仏の映画の授業が楽しい。

一週間の疲れがドッとたまる土曜日は、昼過ぎまでずっと寝ていたいのですが
平日よりも早く目覚めるのであります。

これ、フランスの魔法ね。

日仏に通い続けて年。
(あまりに長すぎるのに、この上達のなさは、日仏側に申し訳なくて年数が言えない
niveau2を終えた後、文法、DELF受検対策、ディスカッション、建築、美術、文学、翻訳講座…色々受講してきたけど、今の授業に長いこと落ち着いてます。
映画が好きということもあるんだけど、机に向かって勉強するのが苦手なタイプの私に合った授業なんだろうねー。

先生御自身が役者さんということもあってか
登場人物の演技のディテールだったり、一コマ一コマの構図だったり、裏話だったり、とにかく説明が丁寧。
このシーンがあの作品のオマージュだ、とか、点と点でしかなかった知識が線となって繋がったり。

1388/5532″ target=”_blank” rel=”noopener noreferrer”>

先生は毎回シナリオを丁寧にテキストに起こして配布。
これが教科書。
万が一授業を休んでも、ネットフォローで印刷できるので、次回までに復習しておけばOK。

もちろん日仏の授業なのでフランス語もスラングから大過去までくまなく学べます。
語彙力も、教科書読むより断然身につく(気がする)。

3時間の授業のあとは、すごく賢くなる(ような錯覚)。



と、日仏の回し者になったようなところで本題。

今学期の映画は、フランソワ・トリュフォー初期の短編『あこがれ』(原題:Les Mistons)。
モーリス・ポンス原作。
20分ほどの作品ですが、たっぷり15時間かけて学ぶのです。

あこがれ・大人は判ってくれない〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選1〕 [DVD]

映画のクラスですが、生徒さんの約半分がトリュフォー作品をご存知でないという驚愕の事実。
だからこそ先入観にとらわれない意外なご質問が飛び交い、面白いです。

ジェラール・ブランetベルナデット・ラフォン、当時夫婦だった二人が本名で出演。
ベルナデットはトリュフォーが直々に出演交渉したのだとか。
無名のNîmoise(パリジェンヌのニーム版名詞)だった彼女、あんなにセクシーなくせして当時17歳

本作は5人の子供たちがジェラールetベルナデットをニームの街中うるさくつきまとうお話。
トゥールの映画祭で上映され好評を博し、トリュフォーの名を映画界に轟かせました。
『あこがれ』によって子供…というよりは悪ガキどもを撮ることに悦びを覚えたトリュフォー。

子供たち>>ベルナデット>>>>>ジェラール
って方程式が出来上がってたみたいです。

Chaque fois je faisais des choses documentaires avec les enfants, j’étais heureux et ça marchait bien.

南仏・ニームの街を自転車で、ペチコートなしのひらひらスカートで颯爽と駆け抜けるベルナデット。
世界遺産ポン・デュ・ガール、夏の陽射し。
モノクロなのに緑が眩しい。
そしてモーリス・ルルーの音楽。
なんて心地いいイントロなんだ~

モーリス・ルルーの代表作と言えば『赤い風船』ですね。

赤い風船/白い馬【デジタルニューマスター】2枚組スペシャル・エディション [DVD]

自転車を木に立てかけ、川で水浴びするベルナデット。
その隙にサドルの残り香を嗅ぐMistons。

子供たちは二人のデート場所、ニームの闘技場にも追いかけていく。
ジェラールはジムのコーチっていう設定だからか、
闘技場の袂からてっぺんまで「ひゃっほー」と言いながら上っていくシーン。
「…これは過剰演出だね」と先生。

毎週月曜日にジェラールとベルナデットが二人で出かけるテニスコート。
ここで庭師がテニスコートに水を撒こうとして、子供の一人がホースを踏んで…という古典的な笑うシーンがある。
このシーンがリュミエールの『庭師(L’Arroseur arrosé,)』へのオマージュ。

フェンス越しにベルナデットのスコートの中を覗きながら煙草をふかすガキども。

はい、第一回目の授業はここまでー。
ここまで5分くらい?
いやー、濃い。濃いよ。