『シベールの日曜日』Cybele ou les Dimanches de Ville d’Avray

『シベールの日曜日』(Cybèle ou Les Dimanches de Ville D’Avray)DVDを買いました。

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インドシナ戦争で記憶を無くしトラウマの中で生きるピエールは、ある日、寄宿学校に入れられるためにこの街にやってきた少女に出会う。彼女の孤独に自分と通じるものを感じたピエールは、恋人マドレーヌが仕事でいない日曜日ごとに彼女と会って遊ぶようになる。しかし、周囲の人々はそんな彼らを異様な目で見ていた……。

監督:セルジュ・ブールギニヨン
出演:ハーディ・クリューガー
パトリシア・ゴッジ
ニコール・クールセル
ダニエル・イヴェルネル
アンドレ・ウマンスキー
原作:ベルナール・エシャスリオー「ビル・ダヴレイの日曜日」

少女の名はシベール。ギリシャの女神の名前。
キリスト教に相応しくないからと、寄宿舎でフランソワーズに名前を変えられてしまった。
家族に見捨てられ、寄宿舎に入れられ、名前まで失った。

ピエールは戦争中に一人の少女の恐れ戦く顔を見た次の瞬間に撃墜され、記憶を失った。
入院中に出会った看護士マドレーヌと付き合うが、いわゆるヒモ状態。
自分に不甲斐なさや周囲への後ろめたさを感じ、
戦争であの少女を殺してしまったかもしれないという罪悪感を抱えながら生きている。

二人は出会い、ピエールは悲しむシベールにガラス玉をあげようとする。
「星のかけらだよ」
なんとまあロマンチックな。運命的な出会いを感じる二人。

家族でもなく、恋人でもない、お互いの心の隙間を埋め、傷を癒しあうかのような関係。
大人になりきれない30歳の青年と、ちょっとませた12歳の少女。
二人の湖畔でのデートシーンは、年齢差も境遇も全てを超越して、絵画のように美しい。
モノクロ映像だからこそ、純粋無垢な、何色にも染められていない二人の愛の美しさがより一層際立つ。
湖に石を投げ、水面に広がる波紋を見ながらシベールが呟く
「あれが私たちの家よ」
という台詞が、とても切ないのだけれども、最高に清らかで綺麗。

ピエールはシベールの本名を知らない。
「あの風見鶏をくれたら教えてあげる」
シベールは街で一番高いところにある風見鶏を指差す。
戦争の後遺症からか、高所に恐怖感を覚えるピエール。

二人で迎える初めてのノエル。
愛に飢えていたシベールにとって、人生初のノエル。
「シャンパーニュの泡が好き」
という彼女の台詞。これもどこか儚さと寂しさがあって好きな台詞。
ピエールへのプレゼントは、自分の本名を書いてツリーに吊るす。
ピエールは彼女との約束通り風見鶏を取りに行く――

最後の悲劇は直接映し出されていないけれども、あまりにも衝撃的で絶句。
「もう私に名前なんかない!」
全てを失った彼女の流す涙がエンドロールまで続く。

観た後暫く立てない。
見てるこっちもが喪失感に襲われる。
雨の夜に見ると余計つらくなるので、
梅雨明けしたことだし、あえて晴れた日曜の午後にでももう一回観よう。

シベールの日曜日 HDニューマスター版

湖のシーンで、白馬に乗ってシベールに「かっこいい」と言われる男性はセルジュ・ブールギニョン監督本人らしいです。
そして神的な演技の天才子役パトリシア・ゴッジ。
両親やお姉さんも役者というサラブレッドらしいのですが、20歳のときに結婚を機に役者を引退しているのですね。
残念。『かもめの城』でも名演技。