『未来よ こんにちは』L’Avenir

おひとり様、という言葉はよく使うけど(自分がよく一人で行動するので)、ネガティブなイメージで使われるのは好きじゃない。

だからこの予告では実際惹かれなかった。

はい、ミア・ハンセン=ラヴの新作『未来よ こんにちは』を見てきました。

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「おひとり様」って言葉、ネガティブなイメージで植えつけられてる気がする。。。

日本でこの作品を紹介するあらすじ、
【バカンスシーズン直前にひとりぼっちになってしまったナタリーは…】(シネマトゥデイ
【思いがけない出来事が次々と起こり、気が付けばおひとり様になっていたが…】(映画.com
一方のフランスでは
【Confrontée à une liberté nouvelle, elle va réinventer sa vie.】
(新たな自由と対峙し、人生を見つめ直す)

。。。全然違う!

こういうローカライズはどうかなあと思う。
原題【L’Avenir】なのに、「こんにちは」ってつけてって一気におダサになってしまった邦題。
作品の意図ともズレている気もする。

マイウェンはどうしてもタイトルを変えたくなかったので日本公開時も原題ままの「MON ROIS」にしたのだとか。
例えば Bonjour, l’avenirというタイトルだったらこの作品の見方も変わってきただろうな。

とタラレバばっかり言ってますが、個人的にとても好きな作品でした。
(以下ネタバレ含みます)


インテリなミアたんが、大人なユペール様を描いたら。
素敵すぎる相乗効果がありました。

とにかく、ずーっとずーっと哲学講師のナタリー(ユペール様)のことを追っている作品。
忙しなく立ち止まらずにずーっと動いているけれど、心のゆとりのせいからか、何があってもナタリーのリズムは平坦に見える。
母の死にも、夫との別離にも動じない。

ナタリーの軽やかな生き方は、「おひとり様」なんて言葉で片付けて欲しくない。

「(他に)好きな人ができた」と夫から報告されたとき
「え?何で言うの?黙っていればいいじゃない」と、ものすごく冷静。

夫は消えるけど、他の誰かと共に生き続ける。
彼との別離よりも、想い出がたくさん詰まったブルゴーニュの別荘を失うことを悲しむナタリー。
クールだ。

ブルジョワなはずなのに、IKEAのエコバッグは捨てずに再利用しようとするところもクールだ。

亡き母の飼い猫・パンドラに助演女優賞を捧げたい。(彼女、ですよね?)
「黒いデブ猫」なんてディスられていましたけど、
スクリーンいっぱいに映る横綱級の体から、ゴロゴロゴロゴロ爆音を奏でるんです。

かわいがっていた教え子をも失ってしまうのかと思ったときにナタリーは涙を流してしまうのですが、そのときに近くにいたのはパンドラ。

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Copyright Ludovic Bergery – CG Cinéma

苦手(猫アレルギー)でも、自らの傍にパンドラを寄せる。母の不在をパンドラで埋め合わせるように—
と思ったらあれあれあれー、最後はそこに?

執着しないというか、潔さも見ていて清々しい。

悟りを開いた哲学者、というわけではない、いち哲学講師というナタリーの職業もいいのかも。
様々な人の考えを、否定せずに受け入れ、
目の前に立ちはだかる逆境にも屈せず、静かに、静かに咀嚼する。
別に悲しいことだけでなく、娘が孫を産んだときもクールだったなー。
映画館でのキモメンとのアレも、なんだあの動じなさ。「映画最後まで見たかったわ!」て、突っ込むところ、そこかい笑

次第に神々しい光がユペール様から見えてきたわ。

ナタリーのお母さん役は、エディット・スコブ!
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エディット・スコブといえば「顔のない眼」(もう57年も前の作品)
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学がない元モデル、という設定だったけれども、ボケてもおしゃれな服を纏うその姿は、まさしくナタリーの母親だった。

さて、シャトーブリアンと言えば肉しか連想しない私ですが、ナタリーは哲学講師という役柄なので、もちろん台詞も哲学系ワード多いです。

なのでもう見終わった後に理解できていない部分があるのが悔しくて悔しくて。
哲学入門本をAmazonで購入しました。。。アントワネット・ポワソン×ディプティックのチラシをブックカバーに★
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