映画『黄色い星の子供たち』を見てきました。
原題「La Rafle」は「一斉検挙」の意味。
1942年、ナチス・ドイツ支配下のパリで行われた史上最大のユダヤ人一斉検挙“ヴェル・ディヴ事件”を事実に基づき、子供たちの視点で描いたヒューマンドラマ。
監督・脚本:ローズ・ボッシュ
出演:メラニー・ロラン、ジャン・レノ、ガド・エルマレ、シルヴィー・テステュー
1903/8729″ target=”_blank” rel=”noopener noreferrer”>
Paris, 16 juillet 1942, 4 heures du matin…
『パリの灯は遠く』でうっすらと認識はあったものの、昨年TIFFでも上映された『サラの鍵』をきっかけに、より具体的に脳内変換できたヴェル・ディヴで起きたユダヤ人迫害事件。
フランスでも、1995年にシラク大統領が謝罪したことで、「ナチスドイツにフランス政府が助力していた」という事実を初めて知った人が多いというのは以前もこのブログで書きましたが…真実から目を背けず、忘却に抗い後世に語り継ぐことは、悲劇を繰り返さないためにも必要なこと。
検挙された13,000人のうち、僅か25人しかいない生存者の証言をもとにつくられているので(実際、子役・ジョーのモデルであるジョゼフ・ヴァイスマンも撮影現場に来てキャストにも直接会っているのだとか)、事実を歪曲することなく、映画的というよりはドキュメンタリーのように描いていてリアリティがあるため、見ているだけで本当に息詰まるほど苦しかった。
実際、撮影現場にいたスタッフ・キャストも体調を崩した人も多かったとか。
メラニー・ロランも帯状ヘルペスを発症し、薬の副作用で精神分裂までに至ったそうで…(彼女の祖父はアウシュヴィッツに強制送還されていたという事実も。)
彼女の体当たり演技もあり、献身的な看護士アネットの姿には強く感銘を受けます。
「この作品は、私たちには常に選択肢があることを教えてくれます。」
とメラニー・ロランがインタビューで答えています。
生きることは何をするにも選択が必要だけれど、検挙者には生きると言う選択肢はあまりにも辛すぎた(ヴェル・ディブや収容所では毎日のように自殺者が続出していた事実こそ描かれてはいなかったけれど)。選択することすら許されずに、人道的な扱いをされず不条理極まりない現実と闘わねばならないのだから。
その中でも、対岸の火事で済むことに真っ向から立ち向かうアネット、そしてヴェル・ディブで水を配布した消防士たちの選択は実に考えさせられました。ユダヤ人一斉検挙は、当初の計画では23,000人以上だったけれど、匿ったり事前に周知に徹したりと擁護したフランス人もいたため、10,000人のユダヤ人がこの悲劇を免れた事実も語られていました。自分の身に危険があることがわかっていながらも、そのような選択ができるのでしょうか。
ラストに救われるシーンはありましたが、重すぎる歴史上の事実に、エンドロールが終わってからも暫く動けない衝撃を受けました。
まだ明かされていない事実は多々あります。
映画というメディアを通してでもいい、真実は闇に葬ることなく明らかにして欲しい。
特に今の日本に生きるからこそ、この作品の存在が重要に感じました。
この映画を観て思い出しましたのですが、『ゲンスブールと女たち』で、子供の頃のセルジュが「juif」(ユダヤ人)と書かれた“黄色い星”をつけているシーン。幾分誇らしげに見えますが、実際セルジュはその“黄色い星”をトラウマに感じて生きてきたのです。
観ようかどうしようか迷い中です。
とても残酷な真実だけれど、この裏で彼らを助けるために尽力した人々がいるという人間の善意に未来をかけたいですよね。
また、ちゃんと真実を公開することで、よりよい関係を生み出せるのでは…と自分の国にも思ったりするのでした。
ユキさん
フランスですら真実と認めたのが事件から50年後のことですからねえ。
自分が生きているうちに真実が明かになるのでしょうか。いやはや疑問。