「包む芸術」パリのクリスト2大プロジェクト

「理解不能なものばかり」

そんな安直な理由で、私はコンテンポラリーアートが苦手でした。

でも人生2回目のパリ旅行で、ポンピドゥーセンターという存在に出会えたことで、私の中のコンテンポラリーアートの偏見がだいぶ変わり、間口が広がりました。

それと、この1年半注力しているフランス語の勉強も、大きく影響しているかと思います。

それまで自分の興味のある記事を中心にフランス語のネットニュースを見ていたけれど、試験用の勉強をすることでさまざまなジャンルの記事を読み、日本語でも不足していた知識や情報を得ることができました。

さらに仏作文やエクスポゼの方法を学ぶことで、ものの見方・捉え方も固定概念やステレオタイプを捨てて、様々な側面から考える力がついてきて、表現もいくらか豊かになりました(たぶん)。
なのでフランス語を“まじめに”勉強するようになってから、映画やドラマ然り、アート作品を観ることが楽しくなってきました。


2020年5月31日、世界的に著名なアーティスト、クリストが84歳で逝去しました。

ポン=ヌフをラッピングした写真を初めて見たときは、とにかくびっくりしたというか…これはなんのメッセージを訴えているの?と頭がクエスチョンマークだらけになりました。

ポン=ヌフ以外にも、オーストラリアの海岸やドイツの国会議事堂歴史的建造物などを布やプラスチックで「ラッピングする」アートで有名だったクリスト。

私にとってクリストは、コンテンポラリーアートの代表格。

今年7月1日~10月19日に特別展「クリストとジャンヌ=クロード、パリ!」がパリのポンピドゥー・センターで開催されると聞き、旅計画が立てられない歯がゆさがなおさら増すのでした。

特別展「クリストとジャンヌ=クロード パリ!」
« Christo et Jeanne-Claude. Paris1. »

2020年7月1日~10月19日
ポンピドゥー・センター
Galerie 2 – Centre Pompidou, Paris

文字通りクリストとジャンヌ=クロードの芸術家夫婦に捧げられた展覧会です。

1958年から1964年までの二人のパリ時代、またポン・ヌフ橋のラッピングプロジェクト「Le Pont-Neuf empaqueté, Paris, 1975 – 1985」の歴史を辿るものです。

展覧会第1部では、クリストがジャンヌ=クロードと出会った1958年から、二人がニューヨークに最終的に居を移した1964年までの間に創作された、約80点の作品を展示。
第2部はセーヌ河にかかる橋ポン・ヌフのラッピングプロジェクトを振り返る資料展です。


クリストが構想し、パリ・凱旋門のラッピングプロジェクト「L’Arc de Triomphe, Wrapped [Project for Paris, Place de l’Étoile –Charles De Gaulle]」についても、2021年9月18日~10月3日に予定通り実現させるとフランスの国立モニュメントセンターが発表しました。

クリストにとって、パリで過ごした7年間はその後の創作活動を展開させる基盤となりました。
絵の表面から解き放たれ、身の回りの物を梱包し、公共空間での期間限定の作品創作へと移行したのです。


コロナ禍で大変だったときですが、こうした活動に目を向け注力していたフランスはやっぱり芸術を大事に取り扱っているのはさすが。

奥さんのジャンヌ・クロードさん(2009年に他界されています)はかつて
1958年の手紙でクリストは『美と科学、芸術は常に勝つ』と書いている。
と述べていたそうです。


芸術はどんなかたちであれ、私たちの生活をより豊かに潤してくれる存在。
そんなことを改めて思うと同時に、せめて来年のラッピングされた凱旋門を見に行く計画を立てたい…と、切に思うのでした。