『フランス組曲』(Suite Française)試写 #フランス組曲

来年1月8日(金)公開の映画『フランス組曲』の試写へ。

http://francekumikyoku.com/

アウシュビッツで亡くなったという、原作者のイレーヌ・ネミロフスキー。
娘たちに託したトランクの中で保管されていた未完の原稿が
60年のときを経てベストセラーに。
そして今回の映画化。

◆あらすじ◆
舞台は1940年、ドイツ占領下のフランス中部の田舎町「ビュシー」。
夫が戦地に出向いた主人公リュシルは、姑と豪邸で息苦しい生活をしていた。
その家へドイツ軍中尉のブルーノが滞在することになる―

個人的な感情も入ってしまって、ややネタバレ含みますので、
続きは「追記」にて…!
(ネタバレいやな方はスルーしてください)

彼が原爆三世で、何度も何度も話を聴いているのに、
年に一回以上のペースで原爆ドームを訪問しているのに、
先月同時多発テロの際にパリにいたのに、
それでも、「戦争」というものが遠く信じ難い存在であるのですが
結局は、同じ人間が引き起こしている行動なのだな、と。

殺すのも人間で、殺されるのも、人間。
それが自分の意思に反していようが、
簡単に人の命を奪ってしまう。
人間が起こす戦争は、殺す方も殺される方も
家族を、人生を、国を…なにもかも狂わせてしまう。

銃を持たないフランス人にだって、悪人はいる。
戦地に来たくなかった、心あるドイツ人はいる。
単なる「戦時中の、ドイツ人とフランス人の許されぬ恋」
を描くのではなく、
登場人物全員の人間的な心理描写がとても秀逸だったので
圧倒的にフランス側に肩入れすることなく見ることができました。
(このフランス好きな女が!ですよ)

フランス人同士なのに英語台詞なのはとっても違和感がありましたが…
そんなことも途中からどうでもよくなりました。

リュシル役は『ブロークバック・マウンテン』のミシェル・ウィリアムズ。
ブルーノ役は、『君と歩く世界』でマリ子様のお相手役だったマティアス・スーナールツ。
軍服をまとってドイツ兵の髪型してると、まるで別人。
そして姑役には、クリスティン・スコット・トーマス。
大好きなランベール・ウィルソンも市長役で。

いい役者揃えても薄味作品になることはよくありますが、
(今年も発狂しそうになるくらいの作品もありました…)
この作品は、ほんとキャストたちの熱演に圧倒されました。
だからこそ一人のキャストに熱く共感することなく、
誰が正しいか正しくないのか、という考えを持つこともなく…
俯瞰的にこの作品を、この時代の状況を見た気がします。

「パリで戦争が起こった。」
物語の冒頭では、田舎町に住むリュシルたちには
戦争が自国で起こっている実感がなかったのですが、
ちょうど一か月前、パリでテロが起こったときに、
南仏に住む友人から電話があったときのことを思い出しました。
「何が起こってるの?大丈夫?外にも出られない?」
1940年代と現代では、通信の発達で情報量も違うし
あの頃の戦争と今回のテロでも「国VS国」「人VS国」と状況も違うけど
温度感は、一緒なのかなあ、と。

本編ではかろうじて泣かなかったのですが、エンドロールでぽろり…。
著者の直筆かと思われる原稿が映し出されるのですが
インクの染みや莫大な量の取り消し線などなどがリアルにあり…
収容所の過酷な状況下で、どのように書かれていたのか想像するだけで涙が出ました。


『フランス組曲』2016年1月8日(金)公開
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