我が至上の愛~アストレとセラドン~

フランスから帰って、いきなり現実に戻るのがとてつもなくイヤだったので、せっかくいただいた試写会チケットで病を治療。

フランス病ね。末期ですから。

我が至上の愛~アストレとセラドン~

素晴らしく美しい芸術作品です。だから私なんぞの雑魚に表現のしようがないのだ。でも私の頭の中の消しゴムが働きだすので、ここいらで書いておかねば。

君が望むなら、僕は君の元を去る。君が望むなら、僕は、君に触れたい。
5世紀フランスを舞台に、伝説の純愛物語が現代に甦る-

5世紀という舞台背景…ノータリンの私はさすがに理解に苦しむ部分もあるだろうから、あらすじを最初に観て試写に挑んだ。

のっけから「原作と同じ場所で撮りたかったのだが、都市開発が進んでいたため無理だった。なので今も尚自然が残る別の場所で撮影した」とナレーションで説明。
原作は私の第3の故郷・ロワール地方だったのですが、オーヴェルニュ地方で撮ったのだとか。ロワールでも充分自然が残っていると思うのですが、やはりそこは巨匠のこだわりがあるんだろうな。なんでも、ロケ地を選び抜くのに3年を要したらしい。ひー!

5世紀フランスを再現する背景も素晴らしいのですが、主役の二人(セラドン:アンディー・ジレ 、アストレ:ステファニー・クレヤンクール)が同じ地球上の生物とは思えない程美しいのだ。CGでしょ、これ?と見紛うほどのイケメンと美女。もうどのシーンを切り取っても絵画になるんだな。

ロメール監督ならではのウィットに富んだユーモアも交えつつ(これが腹の底から笑えるまではあと10年以上かかるな)、ただただ美しい世界が映し出される。BGMは鳥のさえずり、小川のせせらぎ。退屈って?Non, non!
映画のテーマは、原作と同じ「貞節、忠誠(フィデリテ)」。カーッ!私の脳内辞書から確実に消されている単語。だから観ていて恥ずかしいというか、絶対あり得ないと思ってしまうシーンが多々ある。

ただ、美しい。

それだけでカバーできてしまうんだ。美って本当に罪だ。

巨匠エリック・ロメール監督作品を初めて観たのは、恥ずかしながら大学の授業で、でした。いかにもバブル絶頂期にフランスかぶれになったと思われるマダムが先生。ブランドもののスカーフ巻きーの、紙コップで巻いたかのような激しいカーブを描いた前髪だーの、「R」の発音をめっちゃ臭そうな顔で発音しーの、で、なかなかネタに事欠かない先生だったな。理系の第二外国語だから、みんな仕方なくとっている授業なのに、めちゃくちゃハードルの高いことを授業でやるんだ。
「これね、簡単だから」と言って授業の教材としてロメールですよ、あのね、あなたにとっては簡単に聞こえるけどね、アルファベもまともに言えない輩が集まっていることをわかってくださいな。
と、同時期にNHKテレビのフランス語講座でもロメールが。え?そうなの?ロメールって、わかりやすいの?

だいぶフランス語に耳も慣れてきてボキャも増え始めた頃、ロメール作品の言葉の綺麗度がわかってきた。初心者にも聞き取り易く、もちろんアクサンはなく、美しい。心地よくなって、真剣に観ているのに眠くなってしまうこともある。

例によりこの作品もやっぱり心地よく、ほどよい眠気が。でもこれは退屈とか、理解不能なときの眠気とは違うの。極上の癒しなんだ。

「我が至上の愛~アストレとセラドン~」は来月公開。やっぱりもう一回劇場であの心地よさを味わいたい訳で。

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